エドゥアルド・アバロア・アンデス動物相国立保護区は、ボリビア南西部ポトシ県スド・リペス州、ウユニ塩湖よりさらに南に広がる高地の自然保護区です。標高4,200mから5,400mという極めて高いアルティプラーノ(高原)地帯に位置し、赤や緑に染まる湖、噴気を上げる地熱地帯、風が削った奇岩など、地球とは思えないような景観が続きます。ウユニ塩湖観光と組み合わせて訪れる2〜3日の周遊ツアーの定番の目的地として、多くの旅行者に知られています。チリ・アルゼンチンとの国境にも近く、人の手がほとんど入っていない静かで荒々しい高地の風景を体感できる貴重なエリアです。
歴史的背景
この保護区は1973年12月13日の政令によって創設され、1981年5月14日にはその範囲が拡張されて現在の姿になりました。名称は19世紀ボリビアの太平洋戦争で英雄となったエドゥアルド・アバロア(1838〜1879年)にちなんでいます。もともとこの一帯は、アンデス地域に生息する希少な動植物、とりわけ高地に棲む3種のフラミンゴを保護する目的で保護区に指定されました。地質学的には、南リペスの大地は活発な火山活動の産物であり、地下から噴出する熱水やミネラルが湖の色を変え、独特な地熱地帯を形成してきました。乾燥した空気と強い紫外線、そして昼夜の激しい気温差という厳しい環境の中で、フラミンゴをはじめとする生物たちが長い時間をかけて適応してきた歴史が、この土地には刻まれています。行政上はポトシ県のスド・リペス州に属し、チリやアルゼンチンとの国境地帯にも近接する立地から、南米大陸を横断する高地ルートの一部としても位置づけられています。現在では自然保護区としてボリビア国内で最も来訪者数の多い保護区のひとつとなり、2018年には年間およそ15万3千人が訪れたと記録されています。管理・保全の仕組みとしては1999年に導入されたSISCO(入場料徴収システム)があり、集められた入園料の一部は保護区の管理費用や周辺コミュニティの生活支援に充てられ、観光と保全を両立させる仕組みとして機能してきました。
見どころと特徴
- ラグナ・コロラダ(赤い湖):標高約4,278m、面積約60平方キロメートルに広がる浅い塩湖で、水深は1m未満とごく浅いのが特徴です。湖水に含まれる藻類やプランクトンの色素によって水面が赤褐色に染まり、その周囲では餌となる藻を求めて多数のフラミンゴが集まります。
- ラグナ・ベルデ(緑の湖):面積約1,700ヘクタールの湖で、ヒ素などのミネラルを豊富に含んだ水が、風の強さや光の当たり方によってターコイズブルーから濃いエメラルドグリーンまで表情を変えます。背後にそびえるリカンカブール山を望む絶景ポイントです。
- ソル・デ・マニャーナ地熱地帯:噴気孔(フマロール)や泥がぶくぶくと沸き立つ泥泉が広がる地熱エリアで、地下のマグマ活動によって蒸気や熱水が地表に噴出しています。硫黄の匂いが漂う荒々しい光景は、保護区の中でも特に印象的な景観のひとつです。
- アルボル・デ・ピエドラ(石の樹):シロリ砂漠(ダリ砂漠とも呼ばれる)に立つ、強風による長年の浸食で樹木のような形に削られた奇岩です。周辺には他にも風化した岩が点在し、非現実的な砂漠の景観をつくり出しています。
- 3種のフラミンゴと温泉:アンデスフラミンゴ、ヒメフラミンゴ(ジェームズフラミンゴ)、チリフラミンゴという3種のフラミンゴが同じ保護区内で観察できる、世界的にも珍しい場所です。ポルケス温泉などの露天温泉に浸かりながら高地の景色を楽しむこともできます。高地の澄んだ空気の下では、日中と早朝・夜間の気温差が非常に大きく、同じ一日の中で夏と冬のような気候の変化を体験できるのも特徴です。
文化的意義
エドゥアルド・アバロア国立保護区は、単なる絶景スポットである以上に、アンデス高地の生態系を象徴する場所として位置づけられています。3種のフラミンゴが同じ地域で共存する例は南米でも限られており、保護区の指定はこうした希少種の生息環境を守るための取り組みの一環です。また、名称の由来となったエドゥアルド・アバロアは、太平洋戦争でチリ軍に対して最後まで抵抗したことで知られる国民的英雄であり、その名を冠することでこの土地がボリビアという国家にとって重要な意味を持つ場所であることが示されています。標高5,000m級の厳しい環境で暮らしてきた先住民アイマラやケチュアの人々にとっても、この高地の湖沼群やリャマ・アルパカの放牧地は、古くから生活と密接に結びついた土地でもあります。手つかずの自然が広がる一方で、観光による収入は地域コミュニティの重要な財源にもなっており、自然保護と地域経済が結びついた場所として運営されている点も特徴です。放牧されるリャマやアルパカ、野生のビクーニャの姿もこの高原の暮らしを象徴する風景であり、動物と人が共存してきた歴史が今も息づいています。
観光と体験
エドゥアルド・アバロア国立保護区を訪れる旅行者の多くは、ウユニ塩湖からスタートする2泊3日または3泊4日の周遊ツアーを利用します。初日にウユニ塩湖を巡り、南下してシロリ砂漠のアルボル・デ・ピエドラや小さな湖沼群を訪ね、山小屋で一泊します。2日目にはラグナ・コロラダでフラミンゴの群れを観察し、ソル・デ・マニャーナの地熱地帯で早朝の噴気を眺め、ラグナ・ベルデとリカンカブール山の景観を楽しむのが定番のルートです。標高4,000mを超える区間が多いため高山病対策が欠かせず、防寒着や日焼け対策も必須となります。入園料は外国人旅行者で150ボリビアーノ程度、ボリビア国内在住者は30ボリビアーノ程度が目安とされています(料金や規定は変更されることがあるため、最新情報は事前に確認が必要です)。道路事情や気象条件によって行程が左右されやすいため、経験豊富な現地旅行会社による車両とドライバーの手配が安心です。個人での自由な移動が難しいエリアだからこそ、専用車と知識のあるガイドによる周遊が、この土地の魅力を存分に味わう鍵となります。宿泊は基本的な設備の山小屋が中心となるため、快適さよりも高地の静寂と星空を楽しむ気持ちで臨むのがおすすめです。夜には周囲に光がほとんどないため、満天の星空を眺められることも多くの旅行者を惹きつける理由のひとつです。
まとめ
エドゥアルド・アバロア国立保護区は、標高4,200〜5,400mの高地に広がる、赤い湖・緑の湖・地熱地帯・奇岩といった自然の造形美が凝縮された特別な場所です。3種のフラミンゴが同時に観察できる希少な生態系と、ウユニ塩湖から続く周遊ルートの奥深さは、他の国立保護区にはない体験を旅行者にもたらします。標高や道路事情など個人旅行では対応が難しい要素が多いだけに、現地の状況を熟知した旅行会社に相談しながら計画を立てることが、この絶景を安全に楽しむための近道です。







