ウルグアイ南西部、ラ・プラタ川河口に面したコロニア・デル・サクラメント(Colonia del Sacramento)は、南米大陸で最も古い植民都市のひとつとして知られる歴史地区です。1995年にユネスコの世界文化遺産(「コロニア・デル・サクラメントの歴史地区」)に登録され、ポルトガルとスペイン両国の統治の痕跡が入り混じった街並みと、石畳の路地が織り成す落ち着いた美しさで、世界中の旅行者を惹きつけています。
歴史的背景
この街は1680年1月20日、ポルトガルの軍人マヌエル・ロボ(Manuel Lobo)が5隻の船と約400人の兵士・職人・石工を率いてサン・ガブリエル島に上陸したことにより創設されました。ラ・プラタ川の広大な河口部の入口を扼する戦略上の要衝であったため、この地はポルトガルとスペインの間で争奪の対象となり、以後100年以上にわたって支配権が幾度も入れ替わりました。スペイン継承戦争中の1704年から1705年には包囲され破壊されるという苦難も経験し、1713年のユトレヒト条約でようやくポルトガルの主権が国際的に承認されています。その後もスペインによる占領を経て、最終的に現在のウルグアイ領となりました。こうした複雑な歴史のなかで、ポルトガル・スペイン・そして独立後の建築様式が層のように積み重なり、旧市街全体が「生きた博物館」と呼ばれる独特の景観を形成しています。
建築と特徴
最大の見どころは旧市街「バリオ・イストリコ(Barrio Histórico)」で、不規則な石畳の道が迷路のように入り組み、17〜18世紀に建てられた家屋や教会、城壁の遺構が点在しています。
- カジェ・デ・ロス・ススピロス(Calle de los Suspiros/ため息の小道):街で最も古く、最も撮影される通りのひとつ。名前の由来には、処刑場へ向かう囚人の嘆息、あるいは禁じられた恋にまつわる伝説など諸説がある
- コロニア灯台(Faro de Colonia):1680年代にポルトガル人が建てたサン・フランシスコ・ハビエル修道院の遺構の上に建てられた灯台。修道院は1705年の火災で大部分が焼失し、その後1845年に建設が始まり、内戦による中断を経て1857年に完成した。ラ・プラタ川での座礁事故の多さから必要とされた
- ポルトガル博物館、スペイン博物館、原住民博物館:当時の衣装や家具、地図、生活用品などを展示
- 石造りの城門や旧兵舎などの防衛遺構
観光と体験
モンテビデオからは車やバスで約2時間、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスからはラ・プラタ川を渡るフェリーで約1時間というアクセスの良さから、両国の旅行者にとって定番の日帰り・小旅行先となっています。灯台に登れば旧市街と川面を一望でき、夕暮れ時には川が金色に染まる景色が広がります。ウルグアイの伝統料理「アサード」や「ミラネサ」を楽しめるレストランやカフェも多く、17〜18世紀の建物を改装した店も少なくありません。
まとめ
コロニア・デル・サクラメントは、ポルトガルとスペインが繰り返し覇権を争った歴史そのものを街並みに刻みながら、静かで上質な時間が流れる場所です。歴史的価値と落ち着いた景観が調和し、過去と現在がゆるやかに繋がる稀有な旧市街を味わうことができます。